大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

秋田地方裁判所大曲支部 昭和46年(ワ)42号 判決 1974年8月20日

原告

佐藤文夫

被告

高橋六郎

ほか一名

主文

被告らは各自原告に対し、金九五五、九六四円及びこれに対する昭和四六年五月二九日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

原告その余の請求を棄却する。

訴訟費用は三分し、その一を原告の負担とし、その余を被告らの負担とする。

この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一請求の趣旨

一  被告らは各自原告に対し、金三、三九九、九三四円及びこれに対する昭和四六年五月二九日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は被告らの負担とする。

三  仮執行の宣言。

第二請求の趣旨に対する答弁

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

第三請求の原因

一  事故の発生

原告は、次の交通事故によつて傷害を受けた。

(一)  発生時 昭和四五年一〇月一一日午後五時二〇分頃

(二)  発生地 秋田県仙北郡六郷町六郷字馬町二二〇番地先道路

(三)  加害車 小型乗用自動車(秋五に八六七六号)

運転者 被告 高橋信義

(四)  被害車 原動機付自転車(六郷町〇一九〇号)

運転者 原告

(五)  態様 前記道路を後退中の加害車と後続直進中の被害車と衝突

(六)  傷害の部位程度 右下腿開放性両面骨々折、左腰部・右頭部打撲傷、右小指挫傷、左大腿挫傷

二  責任の原因

被告らはそれぞれ次の理由により、本件事故によつて生じた原告の損害を賠償する責任がある。

(一)  被告高橋六郎(以下単に「被告六郎」という。)は、加害車を保有して自己のために運行の用に供していたものであるから、自賠法三条の責任。

(二)(1)  被告高橋信義(以下単に「被告信義」という。)は、加害車を自己のため運行の用に供していたものであるから、自賠法三条の責任。

(2)  仮に右主張が認められないとしても、被告信義は、本件事故発生につき、加害車を後退運転するに際し、後方安全不確認、後退不適当、方向(後退)指示不履行等の過失があつたから、不法行為者として民法七〇九条の責任。

三  損害

(一)  治療費 九一、一五六円

訴外亀谷外科医院分(昭和四五年一〇月一一日から同四六年七月二七日までの二九〇日間の入院治療分及び同年同月二八日から同年一〇月五日まで(実通院日数四八日間)の通院治療分)

(二)  入院諸雑費 五八、〇〇〇円

前記(一)の入院期間(二九〇日間)を通じ、一日当り二〇〇円宛。

(三)  付添看護費 一七二、〇〇〇円

前記(一)の入院期間中の昭和四五年一〇月一一日から同四六年三月三一日まで延べ一七二日間の付添人の日当一、〇〇〇円宛。

(四)  休業損害 四〇二、五〇〇円

原告は精肉店員として勤務し、本件事故当時一ケ月三五、〇〇〇円及び年間賞与二ケ月分(六月、一二月各支給)の収入を得ていたが、本件傷害治療に伴い昭和四五年一〇月一二日から同四六年七月三一日までの約九・五ケ月間右業務に従事稼働し得なくなり、そのため原告は合計四〇二、五〇〇円(内訳35,000×9.5=332,500・35,000×2=70,000)の得べかりし利益を喪失する損害を蒙つた。

(五)  逸失利益 一、五〇七、一四二円

原告は、本件傷害による後遺症として、下肢短縮・機能障害があり、右障害の程度は自賠法施行令別表等級の一二級に相当するから、右後遺障害により、次のとおり将来の得べかりし利益を喪失し、その額は一、五〇七、一四二円と算定される。

(事故時年令) 二一歳

(労働能力喪失の存続期間) 四一年

(年間収益) 四九〇、〇〇〇円

(労働能力喪失率) 一四%

(右喪失率による年間損失額) 六八、六〇〇円

(年五分の中間利息控除) ホフマン複式(年別)計算法

(六)  慰謝料 一、五〇〇、〇〇〇円

(七)  損害の填補 七〇〇、八六四円

原告は、本件事故の損害填補として、被告信義から見舞金五〇、〇〇〇円、自賠責保険から六五〇、八六四円(後遺症補償分五二〇、〇〇〇円)の各支払を受けたので、これを前記各損害額に接分充当する。

(八)  弁護士費用 三七〇、〇〇〇円

原告は被告らに対し、本件事故による損害賠償につき交渉したが、被告らは任意弁済に応じないので、弁護士たる本件原告訴訟代理人らに本件の提起追行を委任し、その手数料として七〇、〇〇〇円、成功報酬として三〇〇、〇〇〇円を支払うことを約した。

(九)  よつて、原告は被告らに対し、各自金三、三九九、九三四円及びこれに対する本訴状送達の翌日である昭和四六年五月二九日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

第四被告らの答弁及び主張

一  請求原因一の各事実中、(六)の事実は不知、その余の各事実は認める。

同二の各事実中、(一)及び(二)の(2)の各事実は否認し、(二)の(1)の事実は認める。なお、被告車(加害車)は被告信義が勤務先の横手市四日町所在訴外横手アサヒ販売株式会社の通勤に使用するため買受けたものであるが、当時信義が未成年であつたため右代金支払確保のため継祖父の被告六郎が単に名目上被告車の買受人、所有者となつたものに過ぎず、かつ、被告六郎は起居不自由な老人であつて被告車に何ら運行支配及び利益を有しないものである。ちなみに、被告車の右買受代金は被告信義において自らの収入をもつて二年間の月賦払で支払い、また強制保険の保険料も自ら支払つている。従つて被告車の真の保有者は被告信義である。

同三の各事実中、(七)の事実は認めるが、その余の各事実は不知である。

二  本件事故は、被告信義が被告車を本件事故現場の左(西)側の訴外大曲信用金庫六郷支店前駐車場に進入駐車させるため後退すべく後方の安全を確認し、後退合図の後尾灯を点灯させながら時速約七、八キロメートルの低速で約一五メートル後退し、右駐車場に左折進入すべく左折合図の後部左側ウインカーを点滅させていたのに、当時後方より直進して来た原告車運転の原告が強度の近視に加えて前方注視を怠つていたため被告車の前記動静に気付かず被告車と約二、三メートル至近距離に至りはじめてこれに気付き、かつ、右に転把すべきを慌てて左に転把したため、折柄後退左折中の被告車の後部に衝突したものであるから、原告の脇見運転ないし前方不注視の一方的過失により惹起されたものであつて、被告車運転の被告信義には何ら過失はなく、かつ、被告車には機能上、構造上の欠陥もないから、被告らは本件事故による賠償責任を免責されるべきである。

仮に然らずとするも、原告には前記のような過失があるから、過失相殺されるべきである。

第五証拠関係〔略〕

理由

一  請求原因一の(一)ないし(五)の各事実は当事者間に争いがなく、〔証拠略〕によると、原告は本件事故により、右下腿開放性両面骨骨折、右腰部・右頭部打撲傷、右小指挫傷、左大腿挫傷の各傷害を受けたことが認められる。

二  〔証拠略〕によると、本件事故の態様は次のとおりである。被告信義は加害車(マツダルーチエ)を運転して本件道路(県道角六線、幅員七・一メートル、アスフアルト舗装、直線、平担)を北(直)進し、本件事故現場から北方約二三メートルの地点(以下単に「<1>地点」という。)に至り、たまたま買物をするため本件事故現場の左(西)側の訴外大曲信用金庫六郷支店前駐車場に進入駐車すべく道路左側で一旦停止し、右<1>地点から後退すべくバツクギヤーに入れ替え後退合図の後尾灯を点灯させて後退を開始した。その際運転席から左肩越しに後方を振返えりリヤーウインドウから自車後方の安全確認をしたが、自車後方約一〇〇メートルの間には後続車両等は認められなかつた。そこで、時速約七、八キロメートルの低速で前記<1>地点から約五、六メートル後退した地点に至り、そのまま自車を後退し左折させるときは前記駐車場入口北角付近の街路灯柱に接触する危険があると判断したため自車左斜め後方を注視しながら後退を続け前記<1>地点から約二一・二メートル後退した地点で、前記駐車場に進入すべくハンドルを左に切りながらたまたま自車の直後方を見たところ、自車後方約二一・五メートルの地点を自車に後続直進中の被害車を発見し、急制動の措置をとつたが、自車後部に加害車が衝突した(衝突地点は、前記<1>地点から約二三メートル、道路左(西)端から約一・二メートルの地点。)以上の各事実が認められ、右認定に反する〔証拠略〕はいずれも当裁判所は採用せず、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。そして右認定事実によると、前記<1>地点から後退開始する際、後方の安全を確認したとき後続車両等を認めなかつたことに気を許し、<1>地点から約五、六メートル後退した地点でたまたま前記駐車場入口の左(北)角付近にあつた街路灯柱と自車との接触の危険回避に気を奪われて、同地点からの後退継続に際し自車左後方のみを注視し自車の直後方からの後続車両等の有無を確認しないまま後退運転をした点で、被告信義の運転方法には過失がある。一方、〔証拠略〕によると、原告は、当時被害車(スズキ五〇cc)を時速約三〇キロメートル(速度制限時速三〇キロメートル)で運転し、本件道路(見透良好<一〇〇メートル見透可>)を直(北)進していたが、たまたま勤務先の仕事のこと等をぼんやり考えながら運転していたために前方注視を怠り、自車進路前方を後退中の加害車に気付くのが遅れ同車に約二・三メートルに接近してはじめてこれに気付き急制動の措置をとりハンドルを左に切つたが及ばず、同車後部に自車左側車体が衝突したことが認められるから、原告の運転方法にも前方注視義務を怠つた点で過失がある。

本件事故の態様は以上認定のとおりであり、右認定のような過失の態様に照らすと、原告と被告信義の過失の割合は各五割とみるのが相当である。

三(一)  被告六郎の責任

被害車の買受人、所有者及び強制保険契約者が被告六郎名義であることは当事者が明らかに争わないところである。そして〔証拠略〕によると、被告六郎は被告信義の叔祖父に当るところ祖母高橋ヨツエの後夫として婚姻したため継祖父となつたものであるが、被告信義の父信一(当時三二歳)が若くして死亡したこともあつて、事実上被告信義の父親代りとして同被告及びその母トシら六人家族の世帯主として農業を営み肩書住所地で共同生活をし被告信義を事実上監護養育してきたものである。ところで、被告信義は農閑期を利用して横手市四日町所在訴外横手アサヒ販売株式会社に臨時雇として勤務し主にその通勤に使用するため、加害車を昭和四五年七月頃、訴外マツダ自動車販売株式会社横手営業所から代金三八万円で購入することになり、代金支払方法は二四ケ月間の分割払(毎月九、〇〇〇円宛、ボーナス月一〇万円宛)の約であつた。その際、被告六郎は、当時被告信義が未成年だつたこともあつて、右訴外会社から同被告が右売買契約上の買受人となることを要請されてこれを承諾し、自己名義の預金口座を訴外秋田銀行六郷支店に設け右分割金額に見合う自己名義の約束手形を右訴外会社宛に振出したほか自ら右訴外会社に右代金内金として現金一〇万円を支払うとともにその頃加害車の所有者として訴外大正海上火災保険株式会社との間で自賠責保険の保険契約を締結しているうえ、自宅に仮車庫を設けて加害車を保管している。一方、被告信義は右売買代金のうち被告六郎が支払つた一〇万円を除く残額を自ら分割完済し、右保険料も自ら支払つているが、加害車を自己の通勤用として専用することなくしばしば被告六郎ら家族の依頼指示により家族の所用のために運転使用していることが窺知される(本件事故当時も事故直前まで大曲市内の病院に入院中の祖母ヨツエの病気見舞い帰りの妹及び親戚の人を同乗させていた。)。また、家族内の被告信義の立場も最近では被告六郎に代つて家業の農業に従事し、農閑期には訴外会社等に臨時雇として勤務して家計を助け、経済的には事実上一家の主柱になつていること等の各事実が認められ、他に右認定を左右するに足る証拠はない。してみると、被告六郎は被告信義とともに加害車を所有し、かつ、その運行をも支配していたものと解するのが相当である。ところで、前記二認定のとおり、被告信義に過失のあることは明らかであるから、被告六郎の自賠法三条但書所定の免責事由の主張は、爾余の点について判断するまでもなく失当であるから、従つて、被告六郎は加害車の保有者として自賠法三条により本件事故により生じた原告の人身損害を賠償する責任がある。

(二)  被告信義の責任

前記二認定のとおり、被告信義の自賠法三条但書所定の免責事由の主張は、失当である。そして被告信義が加害車を自己のため運行の用に供していたことは当事者間に争いがないから、被告信義は自賠法三条により本件事故により生じた原告の人身損害を賠償する責任がある。

四  そこで、本件事故により、原告の蒙つた損害額について判断する。

(一)  入、通院治療費

〔証拠略〕によると、原告は本件傷害治療のため秋田県仙北郡六郷町野中字沢田三番地亀谷外科医院で昭和四五年一〇月一一日から同四六年七月二七日までの二九〇日間入院治療を受け、さらに同四六年七月二八日から同年一〇月五日まで通院治療(実治療日数四八日間)を受け、右入、通院治療費として合計八〇〇、一四六円を要したが、そのうち被告らが二五七、五六三円〔証拠略〕を支払つていることは当事者間に争いがなく、国保請求分として四五一、四二七円であることが認められるから、原告が被告らに対し本件傷害に伴う入、通院治療費として請求し得べき損害額は九一、一五六円をもつて相当とする。

(二)  入院諸雑費

原告の前記入院期間中の諸雑費の支出額の詳細は、〔証拠略〕によるも明確な立証はなされていないが、原告の本件傷害の程度に照らすときは、右諸雑費として原告主張の一日当り少くとも二〇〇円は必要であることは公知の事実であるから、原告は入院諸雑費として前記入院期間中(二九〇日間)少くとも五八、〇〇〇円は必要であつたものと認めるのが相当である。

(三)  付添看護費

〔証拠略〕によると、原告の前記入院期間の昭和四五年一〇月一一日から同四六年三月三一日までの一七二日間、原告は本件傷害のため歩行困難となり付添人が必要であつたので、原告の母訴外佐藤キエが付添看護したことが認められるので、その間少くとも原告主張の一日当り一、〇〇〇円の割合で計算した一七二、〇〇〇円については、原告が現実に支出したものではないとしても、付添看護費用として右同額の損害を蒙つたものと認めるのが相当である。

(四)  休業損害

前記(一)認定のとおり、原告は本件傷害治療のため、前記亀谷外科医院に昭和四五年一〇月一一日から同四六年七月二七日までの二九〇日間入院し、同月二八日から同年一〇月五日まで通院(通院治療実日数は四八日間)したことが認められる。そして、〔証拠略〕によると、原告は本件事故当時精肉店に店員として勤務していたこと、本件傷害のため前記入院期間中は右業務に従事し得ず、その後少くとも原告主張の昭和四六年七月三一日までは事実上稼働し得なかつたものと推認されること、本件事故前三ケ月間の一ケ月平均稼働日数は二九日、平均月収は三五、〇〇〇円であり、年間賞与は六月、一二月に一ケ月分各三、五〇〇〇円であつたことが認められ、他に右認定を左右するに足る証拠はない。してみると、原告は、本件事故により昭和四五年一〇月一二日から同四六年七月三一日までの約九・五ケ月間は、右業務に従事稼働し得なくなり、そのためその間の得べかりし利益四〇二、五〇〇円を喪失する損害を蒙つたものと認めるのが相当である。

(五)  逸失利益

〔証拠略〕によると、原告は昭和四六年一〇月五日担当医師から症状固定の診断を受けたが、その際本件傷害の後遺症については、自覚症状としては、右下腿足関節寒冷時疼痛、長時間挫位、起立位は疼痛のため困難等、他覚症状としては、少し跛行、右足関節屈伸障害、下肢短縮(左下肢長八九・五センチメートル、右下肢長八六センチメートル)等の後遺障害が残存し、その後右障害のため走ること、正座することが困難となり、階段の下降に不便であること等の事情が認められ、他に右認定を左右するに足る証拠はない。そして原告の右後遺症状は自賠法施行令別表の後遺障害等級の一二級に相当するものというべく、その労働能力喪失率は原告が精肉店で主に販売・配達員として稼働していること等に照らし二〇%とみるのを相当とし、右能力喪失期間は二年八ケ月間(自昭和四六年一〇月六日至同四九年六月五日)とするのが相当であると認める。従つて、原告の年間収益は前記(四)認定のとおり少くとも四九〇、〇〇〇円(毎年六月、一二月の各一ケ月分の年間賞与を含む。)と認められるから、原告の本件後遺症による逸失利益は一、二三〇、〇〇〇円(昭和四九年六月分までの賞与を含む。)と認めるのが相当である。

(六)  慰謝料

以上の諸事情殊に本件傷害の部位程度、入、通院期間、後遺障害の内容等を斟酌するときは、原告が本件事故により蒙つた精神的苦痛を慰謝するには九〇〇、〇〇〇円をもつて相当と認める。

(七)  過失相殺

ところで、前記二認定のとおり、原告には本件事故発生につき五割の過失が認められるから、原告が被告らに請求し得べき前記(一)ないし(六)の各金額のうちいずれも五割を減じた金額をもつて相当と認める。

(八)  損害の填補

原告が本件事故についての損害填補として、すでに自賠責保険から六五〇、八六四円、被告らから見舞金五〇、〇〇〇円、合計七〇〇、八六四円の支払を受けていることは当事者間に争いがないから、右七〇〇、八六四円を前記(一)の入、通院治療費四五、五七八円(前示過失相殺率五割を減じた額、以下同じ。)、同(二)の入院諸雑費二九、〇〇〇円、同(三)付添看護費八六、〇〇〇円、同(四)の休業損害二〇一、二五〇円、同(五)の逸失利益六六五、〇〇〇円に右順序に従い順次充当するのが相当である。従つて、原告が被告らに賠償請求し得る損害額は、右充当により填補されない右同(五)の逸失利益の未充当残額三七五、九六四円と同因の慰謝料四五〇、〇〇〇円の合計八二五、九六四円及び後記(九)の弁護士費用一三〇、〇〇〇円の総合計九五五、九六四円をもつて相当と認める。

(九)  弁護士費用

〔証拠略〕によると、原告は本件事故による損害賠償請求について本訴の提起追行を弁護士たる原告訴訟代理人らに委任し、その着手金として七〇、〇〇〇円を支払うとともに成功報酬として判決認容額の一割を支払うことを約束していることが認められるが、諸般の事情に照らして、原告が本件事故による損害として被告らに賠償請求し得る相当な範囲の弁護士費用は一三〇、〇〇〇円をもつて相当と認める。

五  結論

以上認定のとおり、被告らは各自原告に対し、金九五五、九六四円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日であることが記録上明らかな昭和四六年五月二九日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払う義務がある。よつて、原告の被告らに対する本訴請求は、右の限度で理由があるからこれを認容しその余の部分は失当として棄却し、訴訟費用の負担について民訴法八九条、九二条、九三条を、仮執行の宣言について同法一九六条一項を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 塩谷雄)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例